AI時代の情報漏えい・ハッキング:日本・韓国の事例と企業の対策5つ

著者: Lucy.·2026年10月11日 (日)
AI時代の情報漏えい・ハッキング:日本・韓国の事例と企業の対策5つ

RIZAPでは、従業員が健康情報を含む顧客データを、会社が認めていない個人用の生成AIに入力しました。韓国の銀行を狙った攻撃では、AIハッキングツール「ARTEX」の使用痕跡が確認されています。

自社でAIを導入していなくても、AIを使った攻撃や従業員のAI利用への備えは必要です。 顧客情報を誰が閲覧でき、どのサービスに送信できるのか。日本と韓国の事例から見えてきた弱点を整理し、企業が取り組める対策を5つ紹介します。

日本・韓国の事例から見る情報漏えいの経路

RIZAP:個人用AIに入力された顧客情報

RIZAPでは、従業員が会社の許可を得ずに個人用の生成AIを使い、特定保健指導の顧客データを入力しました。8月20日に発生し、9月2〜3日に公表された事案です。氏名や連絡先に加え、健康に関する情報も含まれていました。

業務を委託していた企業・団体の発表にある19,996人は入力されたデータ全体の対象者数です。IHI健康保険組合が公表した210人は、そのうち同組合の対象者数に当たります。いずれも、顧客データがAIに入力された範囲を示しています。

RIZAPの9月3日の発表によると、AIサービスの運営事業者からは、情報を学習に利用した事実や第三者が閲覧した事実はないと回答がありました。一方、その事業者の従業員が情報にアクセスできたかどうかは確認中としています。顧客データをAIに入力する前に、学習への利用だけでなく、保存期間や閲覧権限も確認する必要があります。

大規模な情報漏えいにつながったシステム侵入

  • パーク24 — 9月28日公表: タイムズカーの約660万アカウントが対象です。退会済みや登録未完了のアカウントも含まれ、侵入経路は調査中です。
  • 焼肉きんぐ — 10月5日公表: アプリの会員情報10,788,963件が漏えいしました。同社は、詳しい原因や侵入の経緯を調査中としています。
  • デジタル庁 — 9月11日公表: VPNの脆弱性と保守用アカウントが悪用され、約24.6万件の情報が漏えいした可能性があります。一般国民の個人情報は含まれていません。

これら3件の発表には、AIの使用に関する記載はありません。

Claudeの共有リンクとOpenAIのエージェント

  • Claudeの共有リンク: 7月25〜27日、公開共有リンクから閲覧できる会話やアーティファクトがGoogle検索に表示されたと報じられました。公式ヘルプでも、個人向けの共有リンクは、そのリンクを持つ人が閲覧できると案内しています。業務の会話を共有する際は、リンクを受け取った人がどこまで閲覧できるか確認しましょう。
  • OpenAIの研究用エージェント: OpenAIは、6月に起きたオーストラリア政府機関に対する活動について、9月28日に説明しました。一般公開された製品ではなく、社内で実験していたモデルの安全対策とアクセス制御に問題があったという内容です。また9月25日には、学習・評価の過程で利用者が提供した画像が外部の画像ホスティングサービスに投稿された事例を53件公表しました。社内資料を読む権限と、外部に公開する権限を分ける必要性が見えてきます。

韓国の銀行:融資照会・従業員向け業務システム

9月27日〜10月1日に相次いだ韓国の銀行への攻撃は、融資募集人向けの照会システムや、従業員向けの業務支援システムなどを狙ったものでした。10月3日のヘラルド経済の報道によると、新韓銀行の顧客25,729人、KB国民銀行の顧客119人、ハナ銀行の顧客89人、釜山銀行の外注先従業員11人の情報が漏えいしました。顧客情報を扱う周辺の業務システムが標的になっています。

韓国の金融保安院の関係者は、ARTEXの使用痕跡を確認したと報道機関に説明しました。その後、CrowdStrikeは10月7日、攻撃に使われたインフラの設定とセッション記録の分析結果を公表しました。ARTEXがDeepSeek v4.1-flashに接続して使われ、追加のセッションではGLM-5.3・Grok 4.6も使われたという内容です。AIを活用する攻撃ツールが現れた今、従業員や委託先が接続する業務システムの認証と照会権限を点検する必要があります。


直近3か月に公表された事故7件

ここでは、2026年7月11日〜10月11日に公式発表された顧客情報やサービスに関する事故を紹介します。いずれも発表には攻撃者のAI使用が明記されていません。侵入、外部送信、復旧のそれぞれで、自社が確認すべき点を見ていきましょう。公表日と実際の発生時期は分けて記載しています。

顧客情報が外部へ流れた経路

  • LINE GAME — 7月13日公表、2022年5月に送信開始・2026年4月に停止。 広告ツールの設定確認が不十分で、利用者を区別するための内部識別子が外部に送信されました。送信されたのは約710万個の識別子で、重複を除いた利用者は約610万人です。氏名・住所・電話番号は含まれていません。外部の分析ツールにどの情報が送られているかを確認する必要があります。
  • EPARK PeakManager — 7月31日に第1報、9月24日に調査結果を公表。 7月27日に発覚した予約・顧客管理データベースへの攻撃で、情報が外部に送信され、削除されたことが確認されました。詳しい調査で判明した規模は約2,218万レコードです。正確な人数への換算は難しいと説明し、侵入手法は公表していません。備考欄には健康情報も含まれていました。予約データベースに、どの情報をどれだけ残す必要があるか見直してみてください。
  • ショップサーブ — 8月2日に第2報、5月21日〜8月1日に発生。 ECサーバーに設置された不正プログラムが、購入者情報を外部に送信しました。当時公表された規模は8,853,839件で、同じ顧客の情報が複数回登録されている場合も含まれます。購入者情報だけでなく、店舗管理・メール・FTPの認証情報も漏えいの対象でした。プラットフォームの事故は、出店者のアカウント情報にも及ぶことがあります。
  • Unni(カンナムオンニ)— 9月10日公表、9月4〜5日に侵入。 韓国に拠点を置くHealingpaperが、日本の利用者向けに発表した事案です。相談履歴を照会するAPIが攻撃され、翌日には別の経路から再びアクセスされたことが確認されました。対象人数は公表文に記載されていません。日本の利用者の口コミ・予約写真、医療機関の症例写真、カード番号・カード暗証番号は漏えいしていないと説明しています。一つの経路を塞いだ後も、似たAPIに同じ問題が残っていないか確認しましょう。

開発用の保管場所・管理アカウント・クラウド

  • イノベーション — 8月7日に調査結果を確定公表(第1報は8月4日)。 GitHubの認証情報を設定ファイルに直接記載し、リポジトリには個人データも残っていたため、62,691人分の情報が漏えいしました。発表は開発用リポジトリからの情報漏えいを扱っており、正確な発生日は記載されていません。本番データベースへの侵入は確認されていません。認証情報を安全に管理することと、開発で使う個人データを減らすことの両方を点検しましょう。
  • i-ask — 10月6日公表、10月2〜3日に侵入。 FAQ管理サイトに不正ログインされた後、プログラムが設置されました。同じサーバーを使う最大5社で、最大713,126件の問い合わせ情報が漏えいした可能性があります。一人による複数回の問い合わせも含む件数です。運営会社は、管理者の多要素認証や顧客企業ごとの環境分離などを強化するとしています。管理アカウントの安全性と、顧客企業のデータが分離されているかを併せて確認したい事例です。
  • IDCFクラウド — 10月7日に第2報、同日午前3時40分ごろに障害発生。 ランサムウェア攻撃によってサービス利用に影響を受けたのは、495の企業・自治体です。10月9日の第4報でも、調査・復旧の状況やバックアップ・移行の支援を案内しています。クラウドが止まったときに、どう復旧して業務を続けるかも準備しておく必要があります。

予約・販売・問い合わせ対応を外部サービスに任せている企業も、自社のデータとアカウントを点検してください。どのデータやアカウントを提供しているか、事故が起きたら誰が被害を確認し、顧客に知らせるかを決めておきましょう。同じサービスの事故を利用企業がそれぞれ発表している場合は、別々の事故として重複計上していません。


AI時代に見直したいセキュリティの弱点

1. 事故の経路を自社に当てはめてみる

カトルセは、6月3日〜10月8日に公表された事故268件を集めて分析しました。この分析では、攻撃者によるAI使用を明記した発表は0件で、従業員がAIに情報を入力したRIZAPの事案は集計に含まれています。

企業がこの資料から得られるのは、点検すべき経路です。公表された事故の侵入・送信経路と自社のシステムを照らし合わせ、どの顧客データが外部に出るおそれがあるか確認してください。

2. 従業員・委託先の認証を確認する

CrowdStrikeは、AIツールが攻撃者による短期間での複数組織への侵入を助ける可能性があると評価しました。韓国の金融委員会も10月2日、外部に公開されたシステム全体と、認証・アクセス制御の点検を求めています。

顧客情報を照会する従業員・委託先向けのシステムから確認しましょう。ログインした人がどこまで閲覧できるか、顧客番号を変えるだけで別の人の情報を取得できないかを調べる必要があります。

3. 過去の記録にも攻撃の痕跡がないか探す

ARTEXの設定ファイル、使用モデル、セッション記録は、攻撃を追跡する手がかりです。公開された攻撃情報をセキュリティ担当者と共有し、過去の接続・照会・持ち出しの記録にも同じ痕跡がないか確認してください。今の攻撃を止める対応と、すでに外部に出た情報がないか調べる対応を並行して進めましょう。

4. 従業員のAI利用を把握できていますか?

会社が把握・承認していないAI利用は「シャドーAI」と呼ばれます。Gartnerの日本調査でシャドーAI対応の設問に答えた414人のうち、43%は利用実態を把握しておらず、30%は実態を把握していても有効な対策を講じられていませんでした。2026年2月に実施し、6月18日に公表した調査です。

合わせて73%が、利用実態を把握できていないか、有効な対策を講じられていなかったことになります。従業員がどのAIに、どの業務情報を入力しているかを確認し、学習への利用、保存期間、閲覧権限、送信経路まで管理する必要があります。


企業が取り組むべき情報セキュリティ対策5つ

外部からの侵入、従業員のAI利用、委託先のデータ処理について、次の5点を確認してみてください。

  1. 従業員・委託先が使うシステムの認証と権限を確認する。 外部から接続できるURLと担当者を整理し、ログイン認証と情報の照会権限を点検します。顧客番号を変えると別の顧客の情報まで見えるか、番号の繰り返し入力や大量照会を制限しているかも確認しましょう。
  2. 共有された攻撃情報と過去のログを照合する。 現在の攻撃を止めるだけでなく、過去の接続・照会・持ち出しの記録にも同じ痕跡がないか調べます。IPアドレスだけで判断せず、接続時刻や経路、行動パターンを併せて確認します。
  3. 使ってよいAIと、入力してよい情報を決める。 顧客名簿・健康情報・人事資料を個人用AIに入力してよいか、明確にします。企業向けの契約では、学習への利用、保存期間、運営者が情報にアクセスできる条件を確認しましょう。機密情報の送信を検知・遮断するDLPをどこに適用するかも検討します。
  4. 資料を読む権限と外部へ送る権限を分ける。 資料を読めるエージェントに、そのまま投稿・アップロード・メール送信まで許可しないようにします。外部へ情報を送る前に別途承認を求め、既存のAI共有リンクを誰が閲覧できるかも確認しましょう。
  5. 委託契約にAIの利用条件を明記する。 顧客データを預けた委託先が、どのAIに情報を入力できるかを決めます。再委託の条件、事故の通知手順、データの削除を確認する方法も契約に盛り込みましょう。

自社の顧客データを閲覧できるのは誰ですか。そのデータを、誰がどのAIサービスに入力できますか?

担当者によって答えが違うなら、まずは情報にアクセスできる人の範囲と、データの扱い方をそろえましょう。新しいAI製品を導入する前から始められる点検です。

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出典

韓国の銀行への攻撃と対応
[단독] 은행 연쇄 해킹 도구는 중국 ‘아르텍스 AI’…해커가 사용했다 · Unknown Threat Actor Uses AI-Driven ARTEX to Target South Korean Finance · 최근 발생하는 금융권 침해위협에 면밀히 대응해 나가겠습니다. - 금융위원회 사무처장 주재 「긴급 상황대응 회의」 개최

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