GPT-6 Astraブーム、AIにはどれほどの計算資源が必要なのか

GPT-6、公開から1週間で新規登録を制限
数日前に公開されたOpenAIの最新AIモデル「GPT-6 Astra」が、大きな注目を集めています。昨年末以降、開発者やAIのヘビーユーザーの間では、OpenAIがAnthropicのClaudeにやや押されているとの見方もありました。しかしAstraの登場で、約1年ぶりに首位を奪い返したかのような盛り上がりを見せています。
そんななかOpenAIは、Astraを安定して提供するため、月額200ドルのChatGPT Pro 20Xについて、新規契約と既存プランからのアップグレードを一時停止すると発表しました。利用上限が比較的高いこのプランは、サーバーへの負荷も大きくなります。そのため、新規ユーザーを増やすよりも、まず既存ユーザーの利用環境を維持する判断を下した形です。
現在のPro 20Xユーザーは引き続きサービスを利用できます。月額100ドルのProを含むほかのプランやAPIも、今回の措置の対象外です。OpenAIは、必要な計算能力の増強を急いでいると説明しています。
今回の対応はAstraの人気を示すと同時に、世界有数のAI企業であっても、最新モデルを大勢のユーザーに提供するための計算資源を短期間で確保するのは難しいという現実を浮き彫りにしています。
AIの「学習」と「推論」
AIが計算資源を使う場面は、大きく「学習」と「推論」の2つに分けられます。
学習は、新しいAIモデルを作る工程です。多数のGPUを接続し、大量のデータや問題を繰り返し処理することで、モデルの能力を形作ります。通常は数週間から数カ月かかりますが、学習が完了すれば、その計算も終了します。その後にサービスの利用者が増えても、すでに完了した学習の計算量が増えるわけではありません。GPT-6 Astraの学習には、10万基を超えるGPUが使われたとされています。
推論は、完成したモデルがユーザーからの依頼を処理する工程です。質問への回答、文書の作成、情報収集、プログラムの実行など、AIが何かを処理するたびに新たな計算が発生します。そのため、推論に必要な計算量は、ユーザー数と利用量に応じて増え続けます。
推論に必要なGPUの数は、おおよそ次の関係で決まります。
必要なGPU数 ≈ 1秒あたりのリクエスト数 × 1件あたりのGPU使用時間 ÷ GPUの稼働効率
1件のリクエストに必要なGPU使用時間は、モデルの規模、入力と出力の長さ、推論のステップ数、作業時間などによって変わります。長い文書を読ませたり、複雑な問題を何段階にも分けて検討させたりする作業は、短い質問よりも多くの計算を必要とします。
特に最近のエージェント型AIは、1つの依頼を完了するまでにモデルを何度も呼び出します。計画を立て、情報を集め、ツールを操作し、結果を確認して修正するたびに推論が行われるためです。作業が数十分以上続けば、その間の計算量も積み上がります。AIが高度な仕事をこなせるようになるほど、1件あたりに必要な計算資源も増える傾向にあります。
GPU10万基は、どれほどの規模なのか
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOによると、GPT-6 Astraは10万基を超えるGrace Blackwell GPUを使って学習されました。OpenAIが1つのモデルの学習に10万基以上のGPUを投入した初めての事例です。
GPU10万基を金額に換算すると
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GPUチップのみ:約4,500億〜6,000億円
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サーバーとラックを含む構成:約5,800億〜7,100億円
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データセンターの建設:約2,600億〜6,000億円
- 初期投資の合計:約8,400億〜1.3兆円
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電気料金:1日約7,500万〜1.4億円、90日で約69億〜126億円
- 1日の消費電力量:一般家庭40万〜72万世帯分。人口にすると約90万〜160万人分
AI競争はインフラ競争へ
OpenAIは米国で、合計5GWを超えるStargateデータセンターの建設を進めています。完成後は200万個以上のAIチップを稼働させる計画です。長期的には10GW規模まで拡大する方針で、これは出力1GW級の大型発電所10基分に相当します。
動いているのはOpenAIだけではありません。GoogleはデータセンターとAI向け計算設備への大型投資を続け、Metaは総事業費270億ドル規模のHyperionデータセンターを建設しています。OracleはOpenAIとともに米国各地でStargateを拡張し、SpaceXは買収したxAIのColossusデータセンターを軸に計算能力を増強しています。
AI競争は、より優れたアルゴリズムを生み出す研究だけでは完結しません。最新GPUを大量に確保し、数千台のサーバーラックを高速ネットワークで接続し、それらを動かすデータセンター、冷却設備、安定した電力供給網まで整える必要があります。
日本でも、政府や民間企業によるAI向け半導体やデータセンターへの投資が拡大しています。ただし、調達契約に記載されたGPUの総数だけでは、実際の競争力は測れません。最新の機器がいつ設置され、どれほど大きな単位で接続され、安定して運用できるのかが重要です。
優れたモデルを開発する力に加え、完成したモデルを大勢の人が利用できるだけの計算資源と電力を確保する力が、AI競争の次の勝負を左右し始めています。