ARI、AIネイティブ化で人月型SIを再考

Ledge AI2026年10月15日 (木)
  • •ARI、AI開発の効率化で人月型の案件単価が下がる課題に直面
  • •全社導入翌月頃に年間AI予算を使い切り、ゲートウェイで利用と費用を管理
  • •成果報酬や自社AI基盤の利用量課金を検討、アウトカム型案件は未開始

ARアドバンストテクノロジ(ARI)は、AIを業務の前提にして仕事の流れを再設計する「AIネイティブ化」を進めています。取締役執行役員の山岡択哉氏は、AIによる開発効率化で工数が減る一方、人月を基準に価格を決める従来の方式では案件単価も下がると説明しました。取材は2026年10月7日に行われました。

ARIは2010年設立で、社員の8割以上がエンジニア・コンサルタントです。AI活用の転機は2024年11月頃で、山岡氏はコーディングエージェントが商用利用できる精度に達したと感じました。2025年に専門組織を設けて活用事例を作ろうとしましたが、技術への関心を業務改革につなげることや組織運営に課題がありました。その後、利用ガイドラインとライセンスを全社員に配布し、利用量ランキングも設けたところ、業務外の利用も増え、全社導入の翌月頃には年間AI予算を使い切りました。利用量と業務成果が一致しないと分かり、誰が何のためにどのモデルを使い、いくら費用を使ったか確認するため、AI利用を集約するゲートウェイとダッシュボードを整備しました。

社内システムとの連携検証では、ブラウザー画面で見える情報とAPI経由で取得できる情報の範囲が異なる問題が判明しました。人が画面上で操作する際の制限だけでは、AIのアクセスを意図どおり制御できないといいます。ARIはゲートウェイに認証、権限管理、操作記録、監査ログ、接続方式の制御を担わせ、AIエージェントと社内システムの間に置いています。Claude Codeの設定ファイル「CLAUDE.md」には当初、禁止事項や制約を詳しく書きましたが、山岡氏は制約が作業を妨げる場合もあったと説明しました。現在は必要な禁止事項を残しつつ、手順を細かく指定するより、目的や判断の優先順位を伝える方針です。

ARIが目指すのは、個人がAIを使うことにとどまらず、タスクから会社全体の仕事の流れまでをAI前提で再設計することです。営業業務の例では、朝6時にAIがOutlookの予定を確認し、SharePointなどの過去の打ち合わせ記録や関連情報から当日の資料を作ります。打ち合わせ後は、録音データが所定のフォルダーに入ると、議事録やお礼メール、宿題となった資料の下書きを作成します。メールは人が確認してから送信します。山岡氏は、個人・プロジェクト・全社単位の業務知識を整え、AIにどこまで任せれば完了かを定めることも必要だとしています。開発では受け入れ基準やテストを用意します。

AIとの協働評価では、トークン消費量と生産性の関係を精緻に測ることが難しいため、作業環境や仕様の伝え方、提案の確認、ずれた際の修正を重視しています。利用者やモデル、消費トークン数は可視化できますが、協働の質を数値で評価する仕組みは途上です。ゲートウェイが作業のずれを自動検知するわけではなく、現状は人が途中で確認し、必要に応じて軌道修正しています。

ARIは古いシステムを刷新するモダナイゼーションでもAIを使っています。ブラウザー操作で既存システムの動きを集めて再現テストを作り、仕様を保ったままOS、ミドルウェア、言語のバージョンを上げたシステムを作成し、テストに通るまで修正させます。本番インフラの整備やレビューは人が担いますが、山岡氏は開発工数を大幅に削減でき、規模の大きな案件も相対的に短期間で納品できると述べました。効率化で作業時間が減るほど案件規模も小さくなるため、工数を積み上げる人月型の価格設定では、効率化が値下げに吸収される問題が生じます。

ARIは成果に応じた報酬や、自社AIプラットフォーム・アプリの利用量に応じた課金を検討していますが、取材時点でアウトカム型案件は始まっていません。同社はシステム開発に加え、業務の可視化、再設計、ゲートウェイによる既存システムへの安全な接続、エージェント構築・評価を一連で支援するサービスを提供開始しました。全社一括の変革は難しいため、検証環境や一部門・一業務から始めており、請求書処理の自動化やAIチャットによる経費申請を支援しています。山岡氏は、AI導入が進まない理由として、セキュリティリスクの過大評価、業務手順のばらつき、部門間の責任の曖昧さ、実装体制の不足を挙げました。SaaS企業では半年以内にAIネイティブ化が進み、その後大手企業が続き、他の企業には2〜3年かけて広がるとの見通しを示し、「この2〜3年」で名前が挙がるプレイヤーになることを目指すと語りました。