AWS、自己改善型の文書処理システムを公開
- •AWSがAmazon Bedrock AgentCoreを使い、8つのエージェントで文書を処理するシステムの導入ガイドを公開
- •Two Wheel Storeの注文書は、初回の学習に3分49秒、2回目の処理に1分30秒
- •米国東部(バージニア北部)で月10件を学習し1,000件を処理する場合、AWSの試算は月約58ドル
Amazon Web Services(AWS)は、Amazon Bedrock AgentCoreを使うエージェント型の文書処理システムの導入ガイドを公開しました。システムは2つのグラフ型ワークフローに8つの専門エージェントを配置し、業務文書を分類、抽出、検証したうえで、修正から学んだ指示を保存します。AWSによると、組織は20分未満で導入でき、テンプレートを手動設定せずに新しい種類の文書を処理できます。
ガイドが引用するIDCの調査では、文書関連の課題によって組織は情報労働者1人当たり年間19,732ドルの損失を被り、生産性が21.3%低下すると推計されています。従業員は勤務時間の最大30%を文書業務に費やす場合があり、手作業でのデータ入力の誤り率は1〜4%です。従来の文書処理ツールは形式ごとの事前設定が必要で、取引先ごとにレイアウトが変わると処理に失敗することがあるとガイドは説明しています。
識別ワークフローでは、AnalyzerエージェントがAmazon Textractで文章を抽出し、送信者と文書の種類を特定します。MatcherエージェントはAmazon S3 Vectorsを使い、ベクトル類似度(ベクトルの向きの近さを測る方法)で類似文書を探します。一致する文書がない場合、学習ワークフローでInstructionsエージェントが抽出用の指示文を作り、Extractorエージェントが構造化データを生成します。ValidatorエージェントはAmazon Aurora DSQLのJSONスキーマや業務ルールに照らして検証します。検証に失敗するとInstructions Fixerが指示文を修正し、成功後にSave Instructionsエージェントが再利用できるよう保存します。
既知の文書形式では、自動化ワークフローが保存済みの指示を使います。Extractorが文書を処理し、検証に失敗した場合はTroubleshooterが指示を変えずに抽出データを修正できます。ガイドの例では、Two Wheel Storeの注文書を初めて処理した際、仕入先の商品コード「SB-004」がAcme Bikesの社内形式「AB-SB-004」と一致しませんでした。Instructions Fixerは仕入先コードの先頭に「AB-」を付けるルールを追加し、その後、明細7件が検証を通過しました。初回の処理時間は3分49秒でした。
同じ小売業者から届いた2件目の注文では、Matcherが信頼度スコア3.946で保存済みの指示を見つけました。しきい値は3.7です。学習済みルールにより「EL-002」は「AB-EL-002」、「HB-071」は「AB-HB-071」、「PD-002」は「AB-PD-002」に変換され、明細3件すべてが初回の検証を通過しました。注文合計は5,979.19ドルで、処理時間は1分30秒でした。AWSは、検証失敗後に修正した指示を保存する仕組みと、Troubleshooterの分析から文書の違いの傾向を特定する仕組みを、2つのフィードバックループとして説明しています。
導入例ではAWS CloudFormationのスタックを6つ使い、所要時間は約15〜20分です。AWSアカウントに加え、Amazon Bedrockで有効化したAmazon NovaとAnthropic Claudeのモデル、対応リージョンでのAgentCore、S3 Vectors、Aurora DSQLへのアクセス、AWS CDK v2、Docker、Python 3.11以降、Node.js 18以降、および指定されたAWSリソースを作成する権限が必要です。文書はAmazon Simple Email ServiceまたはS3への直接アップロードで受信できます。EventBridgeがLambdaを起動し、LambdaがDynamoDBに追跡用ジョブを作成してAgentCoreランタイムを呼び出します。エージェントはAgentCore IdentityとAmazon Cognitoを通じてAWSリソースにアクセスし、利用者はチャット機能付きダッシュボードとCloudWatchのテレメトリーを使うAgentCore Observabilityでジョブを監視できます。
米国東部(バージニア北部)で月10件の文書を学習させ、1,000件を処理する場合、AWSの費用試算は月約58ドルです。基盤モデルの推論が合計の約85%を占め、1文書当たり約0.055ドルとなります。実際の費用は、各エージェントに割り当てるモデルに大きく左右されます。例で使うのは、自転車会社の注文書を模した合成データのワークフローです。組織が導入する際は、サンプルのスキーマ、検証ロジック、指示文を自社の文書形式に合わせて置き換える必要があります。AWSは、例外的な形式も含む種類ごとの代表文書5〜10件から始め、業務ルールによる検証、性能監視、文書種類の段階的な追加、本番環境向けのガードレールを設けるよう勧めています。