企業AIに顧客の生活背景が必要

Sifted2026年10月29日 (木)
企業AIに顧客の生活背景が必要
  • •企業幹部は、適切な結果を出すにはモデルの性能や計算能力に加え、顧客の状況を理解する必要があると指摘
  • •Intent HQは顧客の習慣を端末内で分析し、商用モデルのコンテキストウィンドウは約100万トークンに達する
  • •通信会社の顧客向けメッセージは年400件から65件に減少したとIntent HQのCEOが説明

企業向けAIが顧客に合った結果を出すには、モデルの性能や計算能力だけでなく、顧客の行動や置かれた状況を理解する必要があると、経営幹部らが10月28日公開のSiftedの記事で述べました。ゲーム会社Allwynでマーケティングと広告技術を率いた経験のあるカロリーナ・デ・フレイタス氏は、周囲で何が起きているかを示す情報がなければ、最良のAIモデルでも期待する成果を出せないと話しました。行動分析企業Intent HQの最高経営責任者ジョナサン・レイキン氏によると、モデルは文章を作成しデータを分析できますが、1回のやり取りで保持・参照できる情報量には限りがあります。商用モデルで利用できる最大級のコンテキストウィンドウ(1回の処理で参照できる情報量)は約100万トークンです。

Intent HQは銀行、通信会社、小売業者と協業しています。顧客企業は既存のモバイルアプリや端末向けアプリに同社のソフトウェアを組み込み、日々の習慣や位置、行動パターンを端末内で分析します。例えば靴の小売店は、靴を買った人全員に同じ割引を送る代わりに、生活習慣に応じた特典を案内できます。フィフス・サード銀行でAIとデータ分析を担当するデビッド・ポラス氏は、人間の文脈とは、顧客データに意味を与え、個人の行動を理解する助けになるものだと説明しました。

レイキン氏は、大量の行動データから人の意図を示す行動を見分ける基盤が必要だと述べました。生データを外部に漏らさず、端末上で分析するべきだとしています。企業は従来、顧客情報をデータレイク(分析用データを集約する保管庫)に一元保存して後から分析してきましたが、記事によると、データ保護法は顧客のプロファイリングを制限し、保存された行動データはサイバー攻撃の標的にもなり得ます。デ・フレイタス氏は、倉庫や社内システムに保管する顧客データを減らすことが、法令順守とリスク管理に役立つと話しました。

Intent HQは、顧客の行動や習慣を軸にAI戦略を組み立てる企業を「コンテキストネイティブ」と呼び、分散型の端末内システムが採用されていると説明しています。例えば、バックエンドのシステムが端末に、利用者が夕方の電車の遅延に遭っているか、普段フードデリバリーを注文するかを尋ねます。端末は自らのデータを確認し、条件が合えば地域に応じた割引を表示します。利用者の生の位置情報や行動パターンをデータレイクに送る必要はありません。

デ・フレイタス氏によると、従来のマーケティング自動化は、人が作ったルールに基づき、リンクをクリックした利用者に決まったフォローアップメールを送る仕組みです。従来型システムは構築に何年もかかり、置き換えが難しい場合があります。文脈を使うAIは顧客の動機を考慮し、誰に働きかけないかを判断する助けにもなります。レイキン氏によると、Intent HQは通信会社の顧客向けメッセージを年間1人当たり400件から65件に減らしました。また、働きかけるべきでない人を特定し、その顧客の収益も増やしたといいます。

ポラス氏は、銀行の従来型システムは主に過去の出来事を整理、報告、分析する一方、顧客の文脈を把握すれば、行動や関心、潜在的なニーズを読み取れると述べました。顧客がログインして融資を申し込むのを待たず、金融状況の変化をリアルタイムで特定する例を挙げています。Intent HQのプラットフォームIntentOneは、AI World Series Awards 2026で「年間最優秀AIソリューション(国際部門)」に選ばれました。