欧州のAI戦略に依存リスクとの批判

euobserver.com2026年10月15日 (木)
  • •欧州のAI戦略報告書、海外事業者への依存を警告し、投資と引き換えのアクセス確保策を提案
  • •欧州独自の先端モデル開発と、土地や電力を提供して巨大テック企業のモデル利用権を得る案を比較
  • •著者、政府調達や新規業務で欧州のAI・クラウド事業者を優先するよう提言

経済学者、政治家、AI専門家の連合が先月、「欧州のための変革的AI戦略」と題する報告書を公表しました。報告書は、重要なAIを海外事業者に依存する欧州の現状を指摘し、欧州外で下される決定がもたらすリスクを警告しています。共同署名者で欧州委員会の元副委員長、マルグレーテ・ベステアーは、欧州が「外国勢力の遊び場」になってはならないと述べました。別途、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、事業者がAIへのアクセス停止や価格改定を、各産業や関税・デジタル税をめぐる交渉で圧力として使う可能性を警告しました。

報告書の署名者は、欧州の先端モデルに投資して競争する案と、電力や土地を提供し、巨大テック企業が欧州で構築するモデルへの優先アクセスを得る案を示しました。記事によると、報告書は先端モデルの開発を費用とリスクが大きすぎるとして早々に退け、代わりに巨大テック企業の建設を迅速に進め、「保証された」アクセスを得る案を推奨しています。著者は、この案では欧州の依存が減るどころか、主に米国を拠点とする少数の企業の立場が強まると論じています。

著者は、こうした取引で長期的なアクセスを確保できるのか疑問を呈しています。巨大テック企業はすでに欧州市場を利用でき、欧州には交渉力がほとんどないと指摘しました。記事は、主要モデルへの輸出制限や、EUのクラウドを含む特定の管轄区域内でモデルを動かす場合に20〜50%上乗せされる料金にも言及しています。またOpenAIが、ナビエ・ストークス方程式の一部を解くために社内ツールを使った事例を挙げ、そのツールは直近の一般公開モデルより大幅に高い能力を持つと説明しています。著者はこれを、開発企業が最も強力なモデルを社内利用にとどめる可能性の証拠としています。

著者は、欧州がソブリンAI(自らの価値観に基づき運用するAI能力)を育て、製品の安全性、公平性、個人の自由など、AIを欧州の価値観に沿ってどう役立てるか決めるよう求めています。欧州が米国や中国の先端大規模言語モデルに追いつけない可能性はあるものの、重点を絞った欧州モデルなら欧州の優先課題によりよく対応できると論じました。政府には、新たな業務で海外のAI・クラウド事業者を自動的に選ぶのをやめ、利用可能な場合は欧州の代替サービスやオープンウェイトモデルを使い、足りない分野では欧州企業に解決策を委託するよう促しています。著者によれば、こうした調達が地域のモデルや計算能力への需要を生み、欧州のデータでの学習を可能にするとともに、欧州のデータ、資源、エネルギーが海外事業者の力を強めるのを防ぎます。さらに、投資家が支えられる安定した需要をつくるため、公共調達を欧州企業に振り向けることも提案しています。