AIのバックプロパゲーションと人間の脳の仕組みに不一致
- •Metaの研究で、ディープラーニングの学習手法であるバックプロパゲーションが人間の脳の処理メカニズムと一致しないことが示された。
- •モデルのバックプロパゲーションによる勾配値が、高次視覚野におけるfMRIやMEG信号を予測可能であることが確認された。
- •予測能力がある一方で、勾配の空間的・時間的組織化は生物学的な脳の階層構造とは異なっていることが判明した。
2026年5月26日にMetaの研究チームが発表した論文は、ディープラーニングの主要な学習アルゴリズムであるバックプロパゲーションが、視覚処理における人間の脳機能と対応しているかを調査した。これまでニューラルネットワークの順伝播における活性化パターンは、人間の大脳皮質の階層構造と確実にマッピングされることが知られていたが、モデルの重みを更新する際に算出されるバックプロパゲーションの勾配が、同様の生物学的対応を示すかは不明であった。研究チームはこれを検証するため、自然画像に対する人間の脳反応のfMRIおよびMEGの記録を分析した。
チームは標準的なエンコーディング分析を拡張し、これらの勾配を神経データにマッピングした。自己教師あり学習を行う視覚モデル「DINOv3」に焦点を当て、他の8種類の視覚モデルでも同様の結果を再現したところ、バックプロパゲーションによる勾配がfMRIおよびMEGの信号を信頼性高く予測できることが判明した。この予測能力は、特に高次の視覚野や、信号処理の後段において顕著に現れた。
しかし、高い予測精度が得られた一方で、研究チームはモデルに基づくメカニズムと人間の生理学的な仕組みとの間に大きな乖離があることを特定した。ディープネットワーク内での勾配の空間的・時間的組織化は、人間の脳で見られるパターンとは一致していない。これらの勾配が計算される順序は脳の階層的な時間軸とは整合せず、空間的な構成も生物学的な階層と合致しなかった。これらの発見は、人工的な深層学習ネットワークと人間の生物学的システムが同様の表現内容に到達できたとしても、知識を獲得するための根本的なメカニズムは異なっている可能性を示唆している。本研究は、現在の標準的な学習アルゴリズムと、人間が視覚情報を処理する際の生物学的現実との間に不一致があることを強調している。