東京科学大、AIエージェント実験チームが量子スピン法則を実証

Ledge AI2026年11月8日 (日)
東京科学大、AIエージェント実験チームが量子スピン法則を実証
  • •東京科学大の研究チーム、AIエージェントが研究から実機測定まで担った研究をarXivに投稿
  • •6役のAIが約30時間で75件を棄却し、最大3パルスに必要な校正条件10通りを導出
  • •初回測定後に結論を保留し、6時間の再測定で理論を支持する結果を確認

東京科学大学工学院のEl Mustapha Mansouri氏らは、AIエージェントが研究課題の選定から理論導出、計算検証、実験測定、結果評価までを分担した研究を、2026年10月29日にarXivへ投稿しました。人間の研究者は実験装置を組み立て、安全に動かせる範囲を設定しました。

研究では、窒素原子と炭素原子の空孔が隣り合うダイヤモンド中の窒素・空孔中心(NVセンター)のスピン集団を対象にしました。AIエージェントは、マイクロ波パルスを順に当てた際、未測定のパルス列への応答を予測するために必要な校正条件数を調べました。研究代表者役、提案役、計算役、実験役、進行管理役、独立レビュー役の6つの役割をAIに割り当てました。

研究代表者役のAIは、提案の新規性、論理の妥当性、実験での検証可能性を審査し、約30時間で75件を退けました。進行管理役は繰り返し現れる案を次の提案対象から外し、提案役が以前に退けられた案を練り直した後、研究課題が決まりました。

AIは、マイクロ波パルスの長さ、強さ、波形を固定し、位相を変える条件を検討しました。パルス列の途中で各スピンに生じる誤差が変わらないと仮定し、最大L個のパルス列への応答を予測するには、適切に選んだL²+1通りの校正条件が必要かつ十分だと導きました。最大3パルスの場合は10通りです。各条件で測定を繰り返し、平均値を求めます。計算役は理論を独立に検証し、想定外のスピン回転がパルス間に加わる場合の予測誤差を、東京科学大学のスーパーコンピューター「TSUBAME 4.0」で調べました。

実機検証では、10通りの校正条件のデータから、校正に使わなかった4通りの3パルス列への応答を予測しました。理論と比較対象の補間法で予測が異なる条件を選び、どちらが実測値に合うかを確認しました。予測精度の判定基準と測定の信頼性を確かめる条件は、あらかじめ定めていました。

初回測定は予測精度の基準を満たしましたが、測定中に信号が変動し、本来同等になるはずの測定値にずれが出たため、研究代表者役のAIは結論を保留しました。AIエージェントは判定基準を変えずに測定順序を無作為化するなど手順を改め、6時間かけて再測定しました。再測定では予測精度と測定信頼性の両方が事前基準を満たし、理論を支持する結果が得られました。

人間の研究者は装置の性能をAIに伝え、最大電圧や出力などの上限に基づいて安全確認役のエージェントを設定・点検しました。著者らは、仕組みが発展すれば、人間の役割が重要な研究課題の発見、実験可能範囲の拡大、自動化された発見の意義の評価へ移る可能性があると論じています。研究チームは、エージェント連携ソフトウェア「Auctopus」のコードをGitHubで公開しました。