米政府、セキュリティ懸念でAnthropicのAIモデルを制限
- •米政府は6月12日、国家安全保障上のリスクを理由にAnthropicのモデル「Fable」に輸出規制を課した。
- •AnthropicはAmazonのアンディ・ジャシーCEOからの警告を受け、MythosとFableの両モデルへのアクセスを取り消した。
- •今回の介入は、AI主権への国際的懸念と、中国製オープンソースモデルの台頭を浮き彫りにした。
2026年4月、Anthropicは高いコーディング能力を持つAIモデル「Mythos」を発表したが、世界的なサイバーセキュリティ上の脅威となる可能性が指摘された。同社は当初、リスク評価のためサイバーセキュリティ専門家らに限定的なアクセスを許可していた。その後、Anthropicは6月9日(火)に修正版として安全性を高めたとされる「Fable」を公開したが、6月12日(金)に米連邦政府が同モデルを国家安全保障上の脅威に指定し、輸出規制を適用した。これを受け、AnthropicはMythosとFableの双方をアクセス停止とした。Amazonのアンディ・ジャシーCEOは、Fableの機能に懸念を抱き、政府当局へ危険性を警告したとされる。
政府による介入は、AI主権や米国技術への依存に対する広範な懸念を呼び起こした。フランスの政治家ブルーノ・ルタイユーを含む欧州の当局者は、この事件を欧州が独自のAIインフラを強化すべき警鐘だと捉えている。しかし、これらの試みは、機能が高く安価であり、外部のガードレールに縛られない中国製オープンソースモデルとの競争に直面している。中国のスタートアップであるZhipuの株価が上昇していることからも、世界中の企業が中国製代替ツールへの関心を強めており、米政府が国内企業の中国製モデル利用を国家安全保障上のリスクとみなす可能性も浮上している。
サイバーセキュリティ専門家らは、MythosやFableへのアクセス制限が逆説的に国家の脆弱性を高めると警鐘を鳴らす。政府への公開書簡で研究者らは、効果的な防御策の開発にはこうしたツールへのアクセスが不可欠であり、これらのモデルが他の広く普及したソフトウェアよりも大きなリスクをもたらすわけではないと主張した。この事態を受け、米国議会には連邦レベルでの明確なAI規制確立を求める圧力が強まっている。従来の法案が軍事目的のAIに焦点を当てていた一方で、政府が商業用AIモデルの安全性をどの程度精査すべきかについては現在も議論が続いている。
今回の対立は、ソフトウェア技術に核不拡散の概念を適用することの難しさを露呈した。ホワイトハウスが2026年の春から夏にかけて、有力なAIスタートアップの製品を2度にわたり安全保障リスクとして認定するなど反応的な姿勢を強める中、業界への長期的な影響は不透明なままだ。米議員らは、AI開発の急速なペースと国民の監視要求のバランスを取る方法を模索している。