Cohereの調査、AIの文化的多様性における課題を指摘
- •世界81人のユーザー調査で、非英語話者の89.5%がAIの精度向上のために英語へ切り替えていることが判明した。
- •AIユーザーの63%が、欧米中心の歴史的偏向や不適切な敬語など、文化的規範の侵害を報告している。
- •67%の参加者がAIによる自国文化の軽視を懸念しており、文化的配慮を設計の核に据えるよう求めている。
Cohere(カナダのAI企業)の研究チームは、22カ国81人の参加者を対象に、大規模言語モデル(LLM)における文化的なギャップの影響を評価する調査を実施した。2026年6月23日に発表されたこの調査によると、母国語が英語ではない回答者の83%が、AIの回答精度や品質を求めて日常的に英語へ切り替えている。データによれば、非ネイティブ英語話者の89.5%が、実用的な結果を得るために言語変更を余儀なくされている現状がある。
調査参加者は、AIの文化的理解力に重大な限界があると指摘した。回答者の38%以上が、AIによる自国文化への理解度を10点満点中5点未満と評価している。さらに63%のユーザーが、AIが欧米中心の歴史的ナラティブに基づいたり、敬語のレベルを誤ったり、不適切な性差別の表現を用いたりするなど、文化的規範に反する事態を経験した。これらの問題は、ヒンディー語、パンジャブ語、またはフランス語の方言などを使用する際に特に顕著で、地域特有の文脈や社会的ニュアンスをシステムが捉えられないケースが多い。
こうした問題は、生産性の格差や文化的な周辺化という結果を招いている。回答者の67%が、AIが文化をステレオタイプ化し、欧米の視点に固定させることで、自国の文化が軽視されることを懸念した。不適切な回答を受け取ったユーザーが利用頻度を減らすことで、将来のモデル改善に必要なデータの多様性が損なわれるという悪循環も生じている。ユーザーは特に、創作、翻訳、法的なガイダンス、地域情報の検索において、文化的な配慮の向上が急務であると回答した。
論文の著者は、文化的な認識を単なる多言語対応の枠を超えた、AIシステムの核となる設計要件とすべきだと論じている。改善策としては、主要な文化に依存しない地域特化型のローカライゼーションや、日常的なコードスイッチ(会話中に2つ以上の言語を混ぜて話すこと)への自然な対応、歴史的・社会的な文脈において多様な情報源を利用することなどが挙げられた。研究チームは、このギャップを解消できなければ、AIによる生産性の向上は英語圏や欧米の文脈を持つユーザーに偏り、他の層が取り残される事態につながると警鐘を鳴らしている。