欧州委のAI特使任命に批判殺到
- •欧州委員会がシーメンス会長のジム・ハーゲマン・スナベを産業用AIの特別特使に任命した。
- •今回の任命は、EU AI法において産業用AIの適用除外を勝ち取ったシーメンス主導のロビー活動直後に行われた。
- •批判派は、スナベがGoogle CloudやC3.aiの取締役を歴任した経歴による利益相反の懸念を指摘している。
欧州委員会は、シーメンスの監査役会長を務めるジム・ハーゲマン・スナベ(Jim Hagemann Snabe)を、産業用人工知能(AI)担当の特別特使に任命した。60歳のスナベは、欧州の各産業におけるAI導入の加速化を目指し、ウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)欧州委員長およびヘナ・ヴィルックネン(Henna Virkkunen)技術主権担当コミッショナーに対し、2027年3月31日の任期満了まで助言を行う。
今回の任命は、シーメンスがEU AI法の適用範囲縮小を求めるロビー活動を展開してから数週間というタイミングで行われたため、大きな反発を招いている。2026年5月7日、EU理事会と欧州議会は「デジタル・オムニバス(Digital Omnibus)」を最終決定し、高リスクAIの義務化期限を2026年8月から2027年12月へと16カ月延期した。特筆すべきは、この合意により機械類に使用される産業用AIがAI法の対象から外され、別途の機械規制へ移管された点である。フリードリヒ・メルツ(Friedrich Merz)首相率いるドイツ政府当局者は、シーメンスの幹部と共にこの適用除外を主導した経緯がある。
オランダの緑の党議員であるキム・ファン・スパレンタク(Kim van Sparrentak)をはじめとする批判派は、規制枠組みを弱体化させた当の業界関係者に、政策決定への影響力を与えるものだと主張している。懸念の焦点は、Google CloudやC3.aiでの取締役経験を含むスナベの経歴にある。欧州委員会は、利益相反の評価を実施済みであり、スナベは該当する取締役職を一時休止すると表明したが、評価の手法や結果は公表されていない。
この特使職は無報酬であり、規制目標と産業現場での導入とのギャップを埋めることを目的としている。今回の人事は、クラウド・AI開発法やチップ法2.0を含む、欧州委員会の広範な「技術主権」アジェンダに沿ったものだ。この動きは、EUの技術政策において産業競争力を重視する姿勢への転換を示唆している。